浮き屋根とは、屋外貯蔵タンクの液面に直接浮かび、液面の上昇・下降に合わせて上下する屋根です。一般に、固定屋根を持たず、浮き屋根自体がタンクの屋根となる形式を「浮き屋根式タンク(外部浮き屋根式タンク)」といいます。
1.【条文】
消防法
危険物の規制に関する政令第11条
危険物の規制に関する規則第20条の4
2.【解説・その他】
・液面を屋根で覆うため、液面と屋根との間に大きな気相部が生じにくく、揮発性の危険物から発生する蒸気の放出を抑えられます。
・一方、浮き屋根は雨、風、地震動を直接受けるため、浮力、雨水排水、回転防止、外周シール、溶接部などの健全性が重要です。
・消防法令上、浮き屋根の詳細な構造基準は、主として容量1,000kL以上の「特定屋外タンク貯蔵所」に適用されます。
・特定屋外タンクとは、液体危険物の最大数量が1,000kL以上の屋外タンク貯蔵所です。
・浮き屋根の基準は次のとおりです。
| 一枚板構造(シングルデッキ) | 中央部を一枚のデッキ板とし、その外周に箱状の浮き室(ポンツーン)を設ける構造です。一般にダブルデッキより軽量ですが、液面揺動による変形や応力の影響を受けやすいため、一定規模等のタンクでは特別な耐震基準が加わります。 |
| 二枚板構造(ダブルデッキ) | 上板と下板の間を仕切って浮き室を構成する構造です。屋根全体が箱状で剛性と浮力を確保しやすい構造ですが、内部の腐食や漏えいを外から把握しにくい面があり、浮き室内部を含む点検が重要です。 |
・以下の構造基準は、告示第4条の22が対象とする特定屋外貯蔵タンクの浮き屋根について説明します。
| 損傷しても沈下しない浮力 | 浮き部分は仕切り板で完全に区画し、次の破損を想定しても浮き屋根が沈下しない構造とします。 通常のシングルデッキ:相隣する2室または隣接する2室と、浮き部分以外のデッキ部分が破損 耐震基準の対象となるシングルデッキ:連続する3室、回転止め・検尺管等が貫通する室、浮き部分以外のデッキ部分が破損 ダブルデッキ:相隣する2室または隣接する2室が破損 浮力計算では、貯蔵する危険物の比重が0.7以上の場合、比重を0.7として計算します。実液の比重が大きい場合でも、法令上は厳しい側の条件で浮力を確認する趣旨です。 消防危第242号の運用指針では、「沈下しない」とは、想定破損時の最大喫水を計算し、危険物の液面が外周浮き部分の外リムと上板との交点を超えない状態とされています。 |
| 雨水が滞留しても沈下しないこと | 浮き屋根は、屋根上に少なくとも250mmに相当する水が滞留しても沈下しない構造とします。これは非常時の浮力に関する構造条件です。通常運転で250mmまで滞水させてよい、という意味ではありません。 各浮き室にはマンホールを設け、屋根が傾斜した場合や雨水が滞留した場合でも、危険物や水が室内へ入らない構造とします。マンホールのふたは、風や地震動などで外れない構造が必要です。 |
| 排水設備と非常排水設備 | 設置地域の降雨量に応じた排水能力を持つ通常の排水設備に加え、設備が正常に機能しない場合や排水能力を超える降雨に備えた非常排水設備が必要です。いずれも、貯蔵危険物が浮き屋根上へ流出することを防ぐ装置を備えなければなりません。 |
| 着底時の通気 | 浮き屋根が支柱で支えられている状態では、液面の上下によって屋根下の気体が出入りします。このとき屋根を損傷しないよう、必要な通気管等を設けます。 |
| 中心保持と回転防止 | 浮き屋根には、屋根を常にタンクの中心位置に保持し、回転を防止する機構が必要です。回転止めは、屋根の偏心や付属設備との干渉を防ぐ役割を持ちます。 可動はしご、回転止め、検尺管、外周シールなど、互いに滑動する部分は、摩擦や衝撃によって発火するおそれのない材料または構造としなければなりません。 |
| 外周シール | 浮き屋根の外周縁は、たわみ性を持ち、タンク側板に密着する性能を持つ材料で覆います。これは液面と外気の間を封じ、可燃性蒸気の放出を抑える重要な部分です。 法令は特定の製品名や方式を指定せず、「たわみ性」と「側板への密着性能」を要求しています。点検では、シールの破損、脱落、局部的な隙間、側板との引っ掛かりなどを確認します。 |
| 板厚・溶接・漏れ試験 | 特定屋外貯蔵タンクの屋根の最小厚さは、告示第4条の17第3号により4.5mmです。ただし、既設タンクは設置時期や経過措置によって扱いが異なるため、現行規定の数値だけで適否を判断できません。 耐震基準対象のシングルデッキ浮き屋根では、浮き部分の溶接および浮き部分とそれ以外の部分との溶接を、完全溶込み溶接または同等以上の溶接強度を持つ方法とします。 また、規則第20条の9により、特定屋外貯蔵タンクの屋根の溶接部は、真空試験、加圧漏れ試験、浸透液漏れ試験などで漏れがないことを確認します。 |
3.【FAQ】
Q1. 浮き屋根と浮き蓋は同じものですか?
違います。浮き屋根は通常、外気に露出しタンクの屋根そのものとなります。浮き蓋は固定屋根の内側に設けられます。適用される条文も異なります。
| 比較項目 | 浮き屋根 | 浮き蓋 |
|---|---|---|
| 基本構造 | 液面に浮かぶ屋根そのもの | 固定屋根の下で液面に浮かぶ蓋 |
| 固定屋根 | 原則として設けない | 設ける |
| 外気への露出 | 浮き屋根が直接露出する | 固定屋根の内部にある |
| 雨・風の影響 | 直接受ける | 固定屋根により直接は受けにくい |
| 雨水排水 | 通常排水設備と非常排水設備が必要 | 原則として浮き屋根と同じ雨水排水設備は不要 |
| 主な目的 | 液面を覆い、可燃性蒸気の発生・放出を抑える | 固定屋根内部の液面を覆い、可燃性蒸気の発生・滞留を抑える |
| 主な構造形式 | 一枚板構造(シングルデッキ)、二枚板構造(ダブルデッキ) | 一枚板構造、二枚板構造、簡易フロート型など |
| 外周部 | 側板に密着する外周シールを設ける | 浮き蓋の形式に応じたシール等を設ける |
| 地震時の主な問題 | スロッシングによる変形・損傷、浮き室への危険物流入、沈下 | 液面揺動や噴き上げによる浮き蓋の損傷、沈下 |
| 主な法令 | 危険物規則第20条の4、告示第4条の21の3・第4条の21の4・第4条の22 | 政令第11条第2項、危険物規則第22条の2・第22条の2の2、告示第4条の23の2など |
| 外観上の見分け方 | 上から浮き屋根、ポンツーン、可動はしごなどが見える | 外からは通常の固定屋根式タンクに見える |
Q2. 「耐震浮き屋根」は20,000kL以上だけですか?
いいえ。20,000kL未満でも、告示で計算する空間高さHcが2.0m以上となるシングルデッキ浮き屋根は対象です。反対に、告示第4条の21の3はダブルデッキを対象としていません。
Q3. 他に注意することは?
屋外貯蔵タンクの浮き屋根の安全対策について(令和2年3月27日消防危第84号)を確認してください。
4.【浮き屋根のイメージ】

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